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第2回 長良川流域循環器疾患地域連携協議会に参加してきました ― 抗血栓療法とアブレーション治療の最新動向

2026年8月27日(木)、OKBふれあい会館で開催された「第2回 長良川流域循環器疾患地域連携協議会(Nagaragawa Heart Network)」に参加してきました。岐阜市医師会・各務原市医師会・武儀医師会の共催で、「地域の力で守る、あなたの心臓と未来」をテーマに、岐阜県総合医療センター循環器内科の先生方から2つのご講演をいただきました。

当院は岐阜市で循環器内科を標榜しており、カテーテル治療(PCI)を受けられた後の患者さんや、心房細動でお薬を続けている患者さんを日々診療しています。今回の内容は、まさに当院の外来診療に直結するものでしたので、要点を患者さんにもわかる形でご紹介します。

第2回 長良川流域循環器疾患地域連携協議会のご案内チラシ

講演会場の様子

第一講演:冠動脈疾患の抗血栓療法 ― 最新の知見

演者は岐阜県総合医療センター 循環器内科 心血管カテーテル治療科部長の岩間 眞先生、座長はにんじん通りハートクリニックの加川憲作先生でした。

まず「出血しやすさ」を評価する

狭心症や心筋梗塞でステント治療(PCI)を受けると、ステントの中に血のかたまり(血栓)ができないように、血液をサラサラにするお薬(抗血小板薬)を飲んでいただきます。日本循環器学会の2020年のガイドラインでは、このお薬の組み合わせや期間を決めるとき、「血栓のできやすさ」よりも先に「出血のしやすさ」を評価することになっています。

年齢が75歳以上、体重が軽い、腎臓の働きが落ちている、貧血がある、過去に消化管出血や脳出血があった、ステロイドや痛み止めを常用している……といった項目をチェックして、当てはまるものが多いほど「出血リスクが高い」と判定します。日本でPCIを受けた患者さんを調べると、3人に2人はこの「高出血リスク」に該当するそうです。高齢の患者さんが多い当院でも、実感として同じ印象です。

出血リスクが高い方は、2種類の抗血小板薬を併用する期間(DAPT)をできるだけ短くし、早めに1種類(SAPT)に減らす。これが現在のガイドラインの大きな考え方です。

1年以降は「アスピリン」から「クロピドグレル」へ?

PCIから1年以上たった患者さんには、これまで長い間「アスピリン1剤を一生続ける」ことが標準とされてきました。

しかし今回、岩間先生からご紹介があったのは、この常識が変わりつつあるというお話です。日本で行われたSTOPDAPT-2試験の5年間の追跡結果では、1年以降にアスピリンではなくクロピドグレル(もう一つの抗血小板薬)を続けた患者さんのほうが、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓イベントが少ない傾向があり、出血は増えませんでした。岐阜県総合医療センターもこの試験に参加され、地域の診療所からも患者さんの経過について情報提供が行われた試験です。

さらに2025年には、世界の7つの臨床試験(約2万9千人分)をまとめて解析した結果が報告され、やはりクロピドグレルのほうがアスピリンより心筋梗塞・脳卒中を減らし、出血は同程度という結論でした。アジア人が6割を占めるデータであることも、日本の患者さんに当てはめやすい点だと感じました。

講演の中では、1年後にアスピリン単剤へ切り替えた後に脳梗塞を起こされた患者さんの例も示され、今後は「1年以降の1剤はクロピドグレル」という考え方が主流になっていく可能性がある、というお話でした。

心房細動を合併している方の抗血栓療法

心房細動があってPCIも受けた方は、血液を固まりにくくする「抗凝固薬(DOAC)」と「抗血小板薬」を両方飲む必要があり、その分だけ出血のリスクも高くなります。これまでは、PCI後1年間はDOACと抗血小板薬の2剤、1年以降はDOAC1剤というのが標準でした。

今年(2026年)に報告されたOPTIMA-AF試験(日本の75施設が参加)では、2剤を併用する期間を「1か月」に短縮してその後DOAC1剤にしても、12か月併用した場合と比べて血栓イベントは増えず、出血は約半分に減ったという結果でした。安定した冠動脈疾患で心房細動をお持ちの方では、2剤の併用は1か月で十分という可能性が示されたことになります。

質疑応答で印象に残ったこと

会場からは、クロピドグレルとプラスグレルの使い分け、胃薬(PPI)は本当に必要か、PCI後に心房細動が見つかった場合の切り替え方など、実際の外来で悩む質問が相次ぎました。岩間先生からは、日本人にはクロピドグレルが効きにくい体質(遺伝子多型)の方が2割ほどおられること、クロピドグレルにする場合はアスピリンに比べて胃薬の必要性が下がる可能性があること、などのご回答がありました。

第二講演:心房細動を「様子見」で終わらせない ― アブレーション治療の進歩

演者は岐阜県総合医療センター 循環器内科 不整脈科部長の割田俊一郎先生、座長は上久保内科クリニックの上久保陽介先生でした。

心房細動は「脈が乱れるだけ」の病気ではありません

心房細動の患者さんは高齢化とともに増え続け、2030年までに国内で100万人を超えると推定されています。脳梗塞の原因になることはよく知られていますが、それだけではありません。心房細動があるだけで心臓のポンプ機能(左室駆出率)が落ちる方が2〜3割おられ、心不全による入院や心血管死のリスクが上がることが示されています。

ガイドラインでは、脳梗塞予防の抗凝固薬(DOAC)に加えて、高血圧・糖尿病・睡眠時無呼吸症候群・肥満・飲酒・喫煙といった「心房細動を悪化させる要因」の管理が強く推奨されています。割田先生は「この部分は地域のかかりつけ医の先生方の力なしには実現できない」と話されていました。当院で日頃取り組んでいる生活習慣病の管理や、在宅での睡眠時無呼吸の検査が、心房細動の治療の一部でもあるということです。

早めのアブレーションで長期の見通しが変わる

カテーテルアブレーションは、心房細動の原因となる異常な電気信号が出る部分(主に肺静脈のまわり)を、カテーテルで隔離する治療です。講演では、次のようなデータが紹介されました。

心機能が低下した心房細動の方では、お薬だけの治療と比べてアブレーションを行った群で心不全入院や死亡が有意に減り、心機能の改善が4年後も保たれていたこと。診断から1年以内の早い時期にリズムを整える治療を始めた方が、脳梗塞や心不全などのイベントが2割ほど少なかったこと。「様子見」で慢性化させるより、早く見つけて早く治療するほうが、長い目で見て患者さんの利益になる、というのが割田先生のメッセージでした。

割田先生が挙げられた「アブレーションを考えたほうがよい方」は、動悸などの症状がある方、抗不整脈薬を飲んでいる方(特に夏場の脱水で薬が効きすぎる危険があるため)、心不全を合併している方や血液検査(NT-proBNP)の値が高い方、そして症状がなくても70歳以下でこれから長く付き合っていくことになる方、でした。

熱を使わない「パルスフィールドアブレーション」

アブレーションの方法は、高周波で焼く方法、冷凍バルーンで凍らせる方法と進化してきましたが、いずれも「熱」で組織を傷つけるため、心臓の裏側にある食道や神経を傷める合併症がまれにありました。

岐阜県総合医療センターでは2025年から、高電圧の電場を短時間かけて心筋の細胞だけを選択的に処置する「パルスフィールドアブレーション」に全面的に置き換わっているそうです。心筋以外の組織(食道・神経・血管)には影響しにくい仕組みで、約1万7千例の集計で食道の障害や神経障害はゼロだったそうです。さらに今年4月からは、マッピング(心臓の中の電気の地図づくり)とアブレーションを1本で行える新しいカテーテルが使えるようになり、実際の手術動画では左心房の隔離が15分程度で終わる様子が示されました。岐阜県総合医療センターでは昨年6月からアブレーション専用のカテーテル室が稼働し、以前より治療の待ち時間が短くなっているとのことでした。

質疑応答から

「昔からずっと心房細動で症状もなく、抗凝固薬だけ続けている患者さんはどうすべきか」という質問に対して、割田先生は、発症時期がわからない慢性の心房細動でも、左心房の大きさなどを見ながら検討する価値はあること、また出血リスクが高くて抗凝固薬を続けにくい方には「左心耳閉鎖」という別の選択肢も出てきていることから、一度は専門施設で評価を受けることを勧めておられました。

当院の診療にどう活かすか

今回の2つの講演から、当院として大切にしたいことを整理します。

ステント治療後の患者さんについては、岐阜県総合医療センターとの連携のもと、出血リスクを評価しながらお薬の減量や切り替えの時期を判断していきます。お薬が変わるときは、その理由をきちんとご説明します。

心房細動の患者さんについては、抗凝固薬で脳梗塞を予防するだけでなく、血圧・血糖・体重・睡眠時無呼吸などの管理を一緒に進めていきます。そして「症状がないから様子見」ではなく、アブレーションで根本的な治療ができる可能性がある方には、早めに専門施設をご紹介します。ご紹介するかどうかは、診察のうえで判断します。

動悸や脈の乱れが気になる方、健診で心房細動を指摘された方、ステント治療後のお薬について疑問がある方は、遠慮なくご相談ください。地域の専門施設と力を合わせて、皆さんの心臓と未来を守っていきたいと思います。

なかうずらクリニック 院長 後藤芳章

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